Sunday, 28 September 2014

水の音

この展示を見に行った頃はまだまだ暑さも一入で、最寄りの恵比寿駅からの道程もとても長く感じられたなぁ、と思い出してみる。少しばかりの上りの傾斜にむき出しの敵対心でなんとか辿り着いた場所。
今年の夏のこと。涼を獲りにひんやりとした山内美術館。


美術館というと、企画展など海外からやってくるものが大半で西洋画には結構馴染みがある反面、"日本美術"には触れる機会も今までほとんどなく、うん、見てみたいと思っていたところだった。というのも、しばしば日本画家である千住博さんの影響がとても強かったのだと思う。実際に千住博さんの著書を手にすることが多く、そこから「アートって何?」といったような自分で考えても堂々巡りで絶対に答えに辿り着かないであろうことを色々と教えていただいた。美術館の巡り方も、アート作品の捉え方も、一見自由で十人十色であるはずのものであってもなかなかわからない!ものもあるので、堅苦しそうに見えるものでも柔らかく、楽しく魅せてくれる千住さんの言葉選びには目から鱗でした。
そして日本美術ということも。

展覧会のタイトル通り、日本美術の中でも"水"をテーマにした作品選びとなっていて、歌川広重から現代の千住博さんまで時代もスタイルも幅広く勢揃い。
水をどうやって描くのか…これは本当に日本だからこその表現なのかもと感じる、目にも新鮮なものばかりでした。水の色や流れ、水面、雨の情景など水といえど沢山の姿形があるなかで使い分けていく技法や感覚。ダイナミックな構図でありながらも繊細な筆遣いがされているのは、やはり水もそうであるからかもしれない。なんて難しく考えなくても、いるだけで水の音が聴こえてきそうな空間!
なかでも杉山寧さんの「潤」という作品はかなり見入ってしまいました。麻布に深い群青色と白を使い分けて描かれた絵でしたが、神秘的でなぜだか惹き付けられる青は抜群の存在感でした。他にも千住博さんのウォーターフォールや若き日の作品で、木目を生かして水面を表現されているものなど、日本美術のおもしろさ、十二分に体感してきました。

派手やかさのあまりない日本美術だからこその、日本人が持つ奥ゆかしさや謙虚さ、丁寧さは絵であっても伝わってくる。一般にいうアーティストというよりはコダワリ抜いた職人だなぁと思ってしまう。うんうん、日本画、まだまだ見なくては!

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